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2016/08/14 (Sun) 西瓜

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いつの季節も果物は美味しいけど、
からだが水気を欲しがる夏は、ことのほか美味しい。

葡萄、無花果、西瓜(すいか)。

サトウさんは、夏に訪ねて来はるときに、
必ず大きな西瓜をぶらさげておいでだった。
自分が小さかったからか格別に大きく見えた西瓜を、
サトウさんは軽々とぶらさげて、玄関先で母に渡すのだった。
「坊っちゃん、嬢ちゃんに」。

サトウさんは、近所に住む日本画家さんだった。
ただしくは、もともと京都におられたんやけど、
父が引っ越してきた比叡平を気に入って、居をうつされたのだった。

サトウさんは「バンカラ」とか「昔の絵描き」だとかの最後の生きのこり、だった。たぶん。母が、「昔の絵専(かいせん―絵画専門学校)にはああいう人が大勢いはったわね。」と懐かしそうに言うのだった。
たいへんな酒豪で、昼間でも赤らんだつやつや光る顔をして、ぎょろりと剥いた目はうっすらと赤く血走ってて、鼻と口は横に大きく、立派な眉毛は両はじがひときわ長く目尻にむかって垂れ下がっていた。
黒帯だったサトウさんは、警察官に柔道を教えるセンセイでもあった。
いかめしい顔とがっしりした体躯から、絵より柔道の方がどう見てもしっくりくるんだけど、ご本人は真摯そのもの。
たくさんの絵を描いて、たくさんのお客さんがついておられた。
師の池田遥邨さんを神さまのように敬い、ウチの父を師のごとく慕って教えを乞うておられた。
奥さんを京都に残してのひとり暮らしで、妙に所帯じみた風でもあった。
お酒の肴に好きなものを拵えて、ご満悦だった。

一度だけ、サトウさんの家に子どもだけでお邪魔したことがある。
お盆に山のように盛って出されたのは、やっぱり西瓜だった。
庭に向かって開け放った画室の縁側で、ステテコ姿のサトウさんと並んで西瓜を食べた。
サトウさんは、大きな顎でわしわしと西瓜を噛み砕いて、庭に向かって
ぼぼぼぼぼぼぼ、と種を吹き飛ばした。
あたしも負けじ、と出来るだけ大きく頬張って、出来るだけ遠くに種を吹き飛ばした。

サトウさんには、一緒に暮らしていた百太さんという息子さんがいはったのだけど
不慮の出来事で亡くなられた。
百太さんについて語らはることはなかったけれど、
いつも充血していたサトウさんの目は、涙ぐんでいるようにも、見えた。

ツワブキの葉陰に散らばっていた西瓜の種が黒々と、
濡れて光っていた。
昭和40年代の夏。









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プロフィール

しめ

Author:しめ
沢 朱女 (さわ しゅめ)
京都生まれ 大津在住
96年より制作活動。
雑誌、広告、絵本等の仕事を経て
現在は水彩、アクリル、クレパス画等を制作。
chezshume(a)dream.com
※(a)を@にかえてメールアドレス欄に入力してください。

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